公開資料・制作物

公開資料・制作物

EDASの活動の中で一般公開している資料や、制作物を掲載します。

日本における外国人の状況

EDASでは、日本国内の外国人を3つの層に分けてその動向をウオッチしています。
新型コロナによる入国制限から、インバウンド訪日客の激減、就労や留学目的の来日者の減少など、先行きは不透明ですが、法務省出入国在留管理庁(入管庁)が発表した2019年6月の在留外国人数は273.1万人で過去最高を記録しました。
たしかに、我が国の近代以降の歴史において、インバウンド訪日客を含め国内に受け入れる外国人は最高水準であり、私たちは新しい時代を体験中です。とはいえ世界を見渡すと、移民が建国した、いわゆる「移民国家」としての米国・カナダ・ブラジル・アルゼンチン・オーストラリアや、隣国シリアからの難民が大量に流入するトルコ、人口比で見て相当数の外国人労働者を受け入れている中東の国々など、日本を大きく上回る移民・外国人労働者を受け入れている国は数多くあります。
あくまでも、最近の私たち日本人の経験の中で、外国人を受け入れる新しい時代への適応を求められているというべきであろうと思います。外国人が増えた日本を「移民国家」と呼ぶ本が出版されたりしますが、ミスリードしかねません。日本は「移民国家」にはなりえないのです。定住する外国人が増加すれば、移民を感じる機会は増えますが、まだそのスタートラインにもついていないというべきです。
一方、私たちが作成した「決定版 外国人受入れについての年表~渡来人から2020年まで」からも分かる通り、古代の日本は、半島など大陸からの渡来人が数多く来日し、日本の先住民との間で「ミックス」されてきました。従って、日本人は決して「単一民族」ではありません。こうした歴史的事実を正しく認識しつつ、外国人受入の状況を正確なデータに基づいて理解することが大切ではないでしょうか。

ここでは国別、在留資格別在留外国人数が公表されている2019年6月のデータと、平成30年の観光庁「訪日外国人の消費動向」(平成30年)を元に、外国人の状況を示しています。

◆第一層:永住者等
永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者という、所謂「身分・地位系在留資格」により在留する外国人のことで、114.4万人でした。「移民」という言葉はさまざまなイメージで語られますが、この層はわが国においては、文字通り移民と呼ぶべきかもしれません。

◆特別永住者
第一層のほかに、32.1万人が特別永住者として在留しています。
詳しくは「在留資格マップ」の項をご参照ください。
 
◆第二層:中長期在留者
技能実習を含む就労系在留資格により日本に在留する外国人と留学生であり、彼ら/彼女らの多くが概ね1年から数年間日本に滞在し、仕事に就き、暮らします。その数は126.5万人で、大きく伸びています。
第二層のうち、10年程度在留を継続したのち永住者の在留資格を得たり、日本人や永住者との婚姻により第一層にシフトする人、母国に帰国する人、それ以外の国に移る人に分かれます。
リーマンショックで増加にブレーキがかかった在留外国人数は、2012年以降ずっと増加していますが、第一層に比べて、就労目的か留学で来日する第二層の増加率が高くなっています。
 
◆第三層:「インバウンド」訪日客
第一層と第二層の人数が、ある日時点で日本に在留する外国人を示すものであるのに対し、2019年のインバウンド訪日客3119万人は年間を通じて日本を訪れた外国人の総数であり、単純には比較できません。そこでひとつの仮定を置き、ざっくりと比較可能な形にしてみました。
観光庁の「訪日外国人の消費動向」によれば、日本を訪れた3119万人の外国人は平均9.0泊したとされます。この延べ宿泊数を365日で除することで、平均としてある日の訪日外国人数をイメージしました。それが76.9万人です。
 
◆補足:2019年12月情報
国別、在留資格別のデータは2019年6月までが公表されていますが、在留外国人の総数や主要な在留資格、上位の国の情報は、先行して発表になります。それによると、2019年12月末の在留外国人総数は293.3万人で、前年末に比べ20.2万人増加し、過去最高を更新しました。

在留資格マップ

外国人政策を考える場合の1丁目1番地は「在留資格」です。
街で見かける外国人は(外見からは判断できないこともありますが)、日本政府からいずれかの「在留資格」を受けてそこにいます。逆に言えば、短期滞在も含め、在留資格を持たずに日本国内にいることは、「不法滞在」を意味します。
正確に理解しようとすると奥深いものがありますが、基本的な構造を理解すると、ぐっと分かりやすくなります。ここではその概要をご説明します。
 
◆チャートの見方
縦方向が日本に住む期間の長さ。上にいくほど長くなります。横方向は日本のとの関係の深さ。左に行くほど深くなります。

◆帰化、特別永住者、身分・地位系在留資格(赤)、就労系在留資格等(青)
チャートの左上は「帰化」。外国人として来日し、その後日本国籍を取得した人のことで、現在は「日本人」です。
特別永住者は、朝鮮半島や台湾など戦前日本が統治し、「日本」であった地域の出身者で、戦後も日本での居住を選択した人々とその子孫。終戦で日本国籍を失い、代わりに外国人ではあるけれど、通常の永住者とは区別された「特別永住者」という在留資格を得ています。旧満州は「日本」ではなかったので対象外です。
さて、分かりやすくするために、在留資格を大きく二つに分解してご説明します。便宜的に赤と青に色分けしてみたいと思います。

  • 身分・地位系在留資格(赤)
    ひとつは赤い在留資格。日本との関係の深さに基づき得られる在留資格です。日本に就労可能な在留資格を得て、税金や社会保険料を納め、罪を犯すことなく長期間居住した(通常の目安は10年といわれます)人のうち、永住者の在留資格を申請して認められた人たちです。日本人の配偶者等と永住者の配偶者等は文字通りの在留資格です。なお、「等」とは配偶者とその子どもを指すと考えられ、原則的に親は含まれません。定住者については後で述べますが、日系三世などはここに含まれます。
  • 就労系在留資格(青)
    もうひとつは青い在留資格。何かの目的をもって日本に滞在することを認められた在留資格です。
    「就労系」と書きましたが、厳密に申し上げれば、その名称の仕事に就くことができる在留資格と、原則的に仕事に就いてお金を稼ぐことができない在留資格に分かれます。前者が「就労可」で示した在留資格、後者が「就労不可」で示した在留資格になります。「就労不可」の在留資格でも、「資格外活動」の許可を取れば、風俗関係以外であれば、週28時間を上限に仕事に就くことができます。留学生が学費や生活費の足しにコンビニや飲食店などでアルバイトをする姿を見かけますが、これは資格外活動許可を得て行っています。
    就労系在留資格は、その名称に定められた仕事をしても良いという在留資格です。逆に言えば、名称以外の仕事に就くことは認められません。「経営・管理」の在留資格を受ける人は、会社の経営を行うことだけが認められます。大卒で日本の企業などに就職する外国人は「技術・人文知識・国際業務」という在留資格を得ることが多いわけですが、よく「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれます。
    ところで、「技能実習」は、建付け上は就労系であるか否かがグレーな在留資格です。先進国・日本の進んだ技能を学び、母国の発展に役立ててもらうという「国際貢献」とされていますが、実際には「非熟練労働者」として日本経済を支えています。EDASでは実質に鑑み、技能実習は就労系在留資格に分類しています。

◆赤と青の在留資格における「バッファー(緩衝装置)」~「定住者」と「特定活動」
在留資格の新設には、国会での「入管法」(正式には「出入国管理及び難民認定法」)改正手続きが必要ですが、これだけだと入管行政をスピーディかつ柔軟に行うことは難しいとも言えます。そこで設けられているのが、赤の在留資格(日本との関係の深さに基づく在留資格)の「定住者」と、青の在留資格(何を行って日本に在留するかの在留資格)の「特定活動」になります。いずれも法務大臣の裁量によって新しいカテゴリーを設けることが可能です。法務大臣の裁量で定められるということは、濫用される危険性もはらんでいることから、私たちはこの点について注視していかなければなりません。

◆さらなる例外~在留特別許可
入管法第24条には外国人についての強制退去事由が示されています。これに該当する人のうち、法務大臣の自由裁量によって与えられる在留許可(「在留資格」ではない点に注意)を「在留特別許可」と言います。これを受けることで、非正規在留が合法化されます。強制退去に該当しうる外国人に、何らかの理由で短期的に滞在を認める目的で設けられています。

◆在留資格一覧と関連法令
在留資格に関するもう少し細かい説明は、出入国在留管理庁のホームページに掲載されています。もっと知りたい方はこちらをご覧ください。
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/kanri/qaq5.html

外国人政策に関する法令も、同じく出入国在留管理庁のホームページに掲載されています。
http://www.immi-moj.go.jp/hourei/